歯科技工所が大幅黒字転換を実現したある秘策とは?

J-Nextコンサルティング(Watta開発者)牧野と株式会社フェリーチェ生田社長との対談トップ画像

2017年、経営赤字に苦しんでいたフェリーチェだったが、”Wattaによる個別採算性の把握”とWattaを企画運営するJ-Nextコンサルティングの牧野によるコンサルティングにより収益性を大幅に改善、黒字転換を実現しました。

Watta導入前のビフォア画像Watta導入後のアフター画像

■株式会社フェリーチェ
業種:歯科技工所
従業員:5~10名
目的・効果:案件の個別採算を明らかにして収益率をアップ

2003年より神奈川県横浜市で義歯制作を行う株式会社フェリーチェ(以下フェリーチェ)。その歯科技工技術は全国トップクラスの実力を持つ。
特に治療用義歯の制作においては高い技術力を背景に、総義歯・自費診療(保険外診療)へ強みを持ち、数多くの歯科医院から厚い信頼を獲得している。
代表の生田様は著書や研究事例も豊富で国内に6名しかいないゲルバーソサエティの公認インストラクターとして活躍。休日は後進の指導にあたるためほぼ毎週講演会や実習会を開催する。

年中無休のラボ経営。休みの日は勉強会の講師へ。

フェリーチェでの作業風景

生田社長とは2年前の夏に出会いました。当時、私は歯科技工業界への知識があまりなかったもので、生田社長が大学での研究論文や本の執筆、海外講演、国内の後進指導も含めて一年間休みなく働くことを聞いて驚きました。

そうですね。歯科業界はどんどん新しい技術や治療方法が出てくるんですよね。資格を取っただけで勉強しない医師や技工士もいますが、私はそれではダメだと思っていつも何か新しいことにトライするようにしています。

入れ歯についてもあまり正しい認識がありませんでしたが、世間では入れ歯に対する満足度がとても低いようですね。

はい、以前から正しい入れ歯を届けたいという想いは一貫しています。実は入れ歯利用者の90%もの人が不満・不安を感じているんですよね。たいていは「痛い」「噛めない」「上手く話せない」といったことで悩んでいますね。

すごい比率ですね。なぜなんですか?

フェリーチェでの作業風景

まず保険で作る入れ歯はだいたいうまく噛めません。入れ歯は人の口に合わせたオーダーメイドなので、顎の骨格や歯、歯茎の状態を正しく調べて調整しながら作るものです。でも保険義歯は一回型を取って作ったらそれで終わりですから。うまくいくはずないんですよね。

フェリーチェさんでは治療用義歯を活用して製作する入れ歯づくりが特徴ですね。

※治療用義歯とは、本義歯を作る前に仮義歯で顎の骨格や噛み合わせ、歯茎の状態を治療する手法です。完全によい口内状態になってから本義歯を作るため、ピッタリ合って、ずれない、落ちない、よく噛める義歯ができあがります。一方で大変高度な技術と経験が求められます。

はい、技術を磨いてよい義歯を提供することも必要ですが、それ以前に「よい義歯」の情報がそもそも少ないんですよね。だから利用者の方にも、歯科医さんにも伝わるように勉強会、講演、執筆としています。来月は中国での発刊も予定しています。

経営に行き詰まりを感じ始めた設立5年目

一年を締めたら赤字だった

当初は補助金を獲得する話からスタートしましたが、間もなく経営コンサルティングをしていくことになりましたね。

依頼した当初は「ものづくり補助金」の締め切りが迫っていたのでそのお願いでした。正直当時はコンサルティングといってもピンときませんでした。

そこから、私が半年ほどコンサルティングをさせていただ、フォローを含めると一区切りするまで1年間お付き合いがありました。当時はどんな状況でしたか?

当時はとにかくがむしゃらに来た仕事をしていました。高い義歯も安い義歯も、分け隔て無く受注してました。それらが儲かっているかなんて全く考えていませんでしたね。あの頃ちょうど会社として社会保険にも入り、人件費が大きく膨らんで赤字に陥りました。一生懸命仕事を取って丁寧に作っているのに一年締めたら赤字。なんのために会社やっているのかと思いましたよ。(苦笑)

個別採算を把握する挑戦

案件ごとにかけた時間を把握せずザックリと値段をつけていた

たしかに決算書拝見しても苦しい時期でしたよね。私からは生田社長へのヒアリングを通して「個別採算分析」を提案させていただきました。案件別の個別採算を計算する事についてどう感じられていましたか?

正直はじめはあまり腹落ちしませんでした。そんなことよりもっと売上を上げたほうがいいのではと思いました。でも当時は「どんぶり勘定」でした。そこが最大の課題でしたね。一口に義歯と言っても種類も多くあります。また、お客様の状況や歯医者さんのによっても、義歯の製作時間が変わります。

義歯は個別にカスタム品ですよね。当時売価はどのように決めていましたか?

案件ごとにどれだけ時間をかけたかを把握していなかった当時は、ザックリとした値段をつけてしまっていました。なんとなく原材料が高いか、外注加工が高いかなどをみて値段を決めてました。それがまずかったんですね。

利益率マイナス100%の衝撃

利益率マイナス100%の案件がたくさん見つかりゾッとした

実際に案件別の時間を測ってもらいました。なにがわかりましたか?

1ヶ月足らずでいろいろわかりました。当時はWattaではなく紙に案件別の時間を書き出していました。途中「げっ、この義歯こんなに時間掛かってたんだ」と思うようなことが多々ありました。

うちは保険診療と自費診療の2種類がありますが、もともと技術面を重視しているので保険義歯もそれなりに時間をかけていたんですよね。結果的には保険義歯も自費義歯も同じくらい制作に時間がかかっていた。でも売値は2倍以上違うんです。

つまり保険義歯は自費義歯の半分のお金しかもらえないけど、作る時間はほとんど同じだったわけですね。

売価の2倍以上に製造原価をかけている保険義歯がたくさん見つかりました。これはゾッとしましたね。1万円で作って2万円で売るならいいですが、2万円で作って1万円で売っていたわけです。これは儲かるハズないなと・・

社長の無償奉仕をやめましょう

それだけでも大きな発見ですね。他にはどうでしたか?

「従業員の時間」を測ると同時に「自分の時間」の使い方も振り返ってみたんです。実は自費診療の義歯は歯科医に立ち会って調整作業をします。つまり納品先の歯医者さんに出張しているんです。それが結構な日数と時間だったことに気づきました。

何日でしたっけ?

年間200日以上ですね。まぁほぼ毎日。

出張費は?

もらってませんでした(苦笑)

社長の給料どこからでていたんでしょう?(笑)

本当にどうりで赤字なわけです。その出張費をお客さんごとに査定ししっかり請求するようにしました。みなさんあっさりと払ってくれて。今まで何だったのかなと。

保険診療の撤退から営業利益は大幅黒字転換へ

「保険診療」をやめ「自費診療」のみに事業を集中。利益は劇的に改善

3ヶ月ほど経った時、経営も大きく舵をきることになったかと思います。

「保険診療」をやめ「自費診療」のみに事業を集中しました。実際に収益をみると「自費診療」と「保険診療」の格差にびっくりしたんです。牧野先生に個別案件の収益性を可視化してもらって、『こんなにも「保険診療」の収益は悪いのか・・・』と愕然としました。

保険診療をやめるというのは大きな決断です。売上や利益はどうなりましたか?

始めは不安だったのですが、売上は変わりませんでした。1社の歯科医さんとの契約は切れてしまいましたが、他の歯科医さんとはそれまでと変わらず関係性が維持できています。むしろ新しい歯科医さんとの付き合いは増えたくらいです。一方で利益は劇的に大きく改善しました。

完全に黒字転換しました。

そうですね。業績の足を引っ張っていた保険診療をやめて赤字の原因がなくなりました。そうしたら空いた時間で自費診療をもっと受注できた。その結果売上は殆ど変わらず、利益だけがアップしました。

私から見ても、とても大胆で素早い判断でした。何が判断の決め手になりましたか?

社員のみんなにも協力してもらい、個別採算を確実性の高いデータとして把握できていたので、想像以上に「保険診療」を続ける弊害が明らかになりました。合理的な判断だったと思います。

小さいラボだからこそできる大きな決断とも思えます。今振り返ってどういう感想ですか。

まずは、黒転してよかったです。当時の判断も間違っていませんでした。ただ、ラボの大小によっても解は変わってくるでしょうね。大きなラボでは歯医者さんへルート営業があります。そうした条件があれば、無駄なくヒアリングをし、義歯もお届けできるのでしょう。大規模ラボなら保険診療であっても効率的に経営できるかもしれません。

社員さんの意識も変化が

社員自身が時間を意識して、無駄を無くし始めた

社員の皆さんには何か変化がありましたか?

時間を意識するようになったのは大きな変化でしたね。なんとなくこれまでは来た案件をこなしているという毎日でしたが、案件毎に掛けるべき時間(目標時間)が明確になったので、スピード感が明らかにアップしました。

どうやって早くするのか?どうすれば無駄がなくなるのか?料金設定は正しいのか?ということが少しずつ見えてきて社員も考えるようになってきました。

実は以前の会社でも80円/分で単価を考えるように言われていたのですが、経営者になってからは案件をさばくことに集中していたので、生産性に関しての意識は希薄でした。でも時間意識を持つようになってからは、売上より収益性を重視するようになりました。以来、人ひとりが1日動くなら5万円/日以上は請求しないといけないと社員にも伝えています。

ソノ・シゴト・オワッタ? 勝手に社長の代わりをしてくれるWatta(ワッタ)

Wattaが「社員に把握してほしいこと」を自動で教えてくれる

今は紙をやめてWattaになっています。紙と違いはありますか?

一番の変化はWattaが勝手に「社員に把握してほしいこと」を教えてくれるため、ちょっとしたマネージャーの役割を担ってもらっていると言えますね。

普段は従業員に「早く作業してほしい」とか言いにくいですもんね。角が立つというか(笑)。スマートフォンで時間を入力すると自動的に「スピードアップ」と言ってくれるのは社長にとってはけっこう魅力です。

他に経営面で変化したことはありますか?

データとして個別案件の収益を把握しているので、しっかりと歯科医さんへも単価の説明ができるようになりました。エビデンスのある値付けになので、歯科医さんの納得感も高いです。さらなる収益性の向上につながるポジティブな変化です。

小さな会社でもできる働き方改革

日経新聞での歯科技工士のなり手不足
歯科技工士のなり手不足は大手経済紙でも取り上げられるなど問題になっている

巷間では「働き方改革」「生産性向上」が謳われています。私は個人的に「働き方改革」って言葉あまり好きじゃ無いんですけどね。でもフェリーチェさんの取り組みは完全な生産性向上です。世間では立派な働き方改革として受け取られると思います。

いま歯科技工士を目指す人が少ないんです。だからあまり採用面では簡単に増員は期待できません。これから残業もどんどん厳しくなりますよね。そうなったら限られた人数と時間で収益を最大にするしかないと。今回の取り組みはちょうどマッチしてましたね。

生産性があがれば会社の収益がアップし給料も増やせます。それが本当の目指すところですよね。

そうですね。結果的にこの生産性向上が社員に返ってくる。そうなれば働きやすくなり、担い手も長期的には増えると考えています。

今後の展望:ラボとしての世界進出

中国での展示会での様子
中国での展示会での様子。世界展開へ余念がありません。

ものづくり補助金を使って新しい技術にトライ、そして海外にも行かれてますね。講演、執筆も多くされている。今後どんなラボ経営をしていきたいと考えていますか。

歯科技工士の人材確保は非常に難しく、かつ義歯自体も将来は人口と比例して減少していくことが予測されます。そこで自らパイを広げるために海外事業への進出を積極化しています。技術輸出できればいいと思っています。

直近では中国語で出版する本に、北京大学の先生から推薦文をいただきました。他にもベトナム・マレーシア・シンガポールと海外との繋がりの中で新しく見えた世界も多いです。

次は本当に攻めの段階ですね。

Wattaで守りを固め、いよいよ攻めの世界展開。経営は次のフェーズへ。

海外展開など「攻めの経営」ができるようになったのも、Wattaを通して「守り(生産性)」を固められたからではないかなと考えています。

先日は義歯を使っていただいている中国人の男性から、「あなたのお陰でよく噛めるようになった。感激した!」と抱きつかれましたよ(笑)。日本人は感情を表現されるかたが多くないので、新鮮な体験でした。いずれにせよ、義歯には人を幸せにする可能性がまだまだあるんですよね。

国内はお年寄りは増えますが、保険に依存すると業界も苦しい。歯科技工所の業界を今後どうされていきたいですか?

社員の給料は年次や年齢によって上がっていきます。とはいえ生産性を現状維持のまま労務費をアップすると、どこかで限界がきます。これは業界全体に共通して存在する問題だと思います。

そこでWattaのようなツールを使って生産性を把握し、社員の技術力と時間意識を向上させることで「赤字」に陥らず経営ができていくと考えています。

引き続き業界を変えていけるご活躍を期待しています。ありがとうございました。

ありがとうございました。

フェリーチェ生田社長どうもありがとうございました

フェリーチェ様のように経営改善に取り組んでみませんか?


儲っていると思っていたのに決算では赤字だった。そんな経験はありませんか?顧客別の収益性、案件種別の収益性を知れば、売価アップやコストダウンがフェリーチェ様のように合理的に判断できます。Watta使うとどの案件が、どの顧客が儲っているかがすぐにわかります。
無料登録はコチラ