ワークライフバランスの欺瞞
いきなり否定的な話で恐縮だが、今話題となっている「ワークライフバランス」という言葉は私は嫌いだ。
「働きすぎ」やましてや「過労死」、「ブラック企業」という事に対する社会の嫌悪感はある程度認めるところだが、ワークライフバランスというのは「仕事をしすぎても良いことないよ」という前提になっている気がする。
ましてや、「残業は悪」、「9時-17時で仕事を終わらせるのが全てに優先される」という風潮には全く同意しかねる。
仕事は本来楽しいもので無ければいけない。一日8時間も共にする仕事がつまらないならワークライフバランスもないのではないか。どちらかというと「ライフ・ワーク・バランス」というように「生活の合間にお金を得るために仕事」をするというふうに聞こえる。
もちろん子育てや家事がある女性にすれば働く意味は生活を上回ることはないだろう。しかし多くの働き盛りの男性にしてみれば仕事の合間に生活するのが実情だ。だがそれは悪いことなのだろうか?
パートタイマーでスーパーのレジ打ちをしたり、単純な事務作業を担う人にしたら「ライフ・ワーク・バランス」が相応しい表現かも知れない。でも全ての労働者がきっかり残業無しで働いたら、日本は国際競争で大負けして全員が貧乏になり結果「ワークワークワーク」に戻るのではないだろうか。
残業削減で空いた「ライフ」の時間に「自分の好きなことで副業」というのがブームになっているのは皮肉としか言い様がない。
前置きが長くなったらが、この話の背景にあるのはワークライフバランスをいち早くから布教活動をしていた某女性経営者の本を読んだためだ。上記のようにワークライフバランスについては否定的な立場の私だが、この本のメソッドからは学ぶことが多かった。
毎日の仕事スケジュール管理を15分刻みで行う
上記の中見出しそのままなのだが、この本では毎日のスケジュール管理を15分刻みで行うことを推奨している。
これまで日々のスケジュール管理を殆どしていなかったビジネスパーソンにとっては、15分単位のスケジュール管理というとかなりの抵抗感があるだろう。ましてや最近ではマイクロマネジメント(細かすぎる上司の介入)は即パワハラとも言われることもある。
しかしよく考えてほしい。全てのビジネスパーソンにとって「今日一日、何をすべきか」仕事のスケジューリングをするのは当然の責務であろう。
とはいえ大半のビジネスパーソンは「10時から営業会議」「15時から業務打ち合わせ」といったように日ごとのイベントのみをスケジューラーに入れただけで1日のスケジュールを作っていると勘違いしている人も多い。
しかしそれでは残りの時間に何をすべきか誰から見ても明らかではないだろう。それが毎日続けば1ヶ月、1年と経ったときにその人がどんな仕事をしたのかトレースすることはできない。15分単位のマネージメントはここに目を付けている。
具体的な手法
手順としては以下の通りだ。
(1)まず朝(できれば前日に)その日の業務スケジュールを15分単位で記載するのだ。1時間を4コマ(15分ごと)に分けて仕事のスケジュールを立てる。
(2)実際に仕事が進捗すれば行った仕事の内容を計画の右に書いていく。
(3)一日の仕事が終わったら予定と実績の差をみて振り返りを行う。
単純にこれだけのことだ。
私が使っているエクセルファイルを個々に添付する。
時間ノート始めは15分単位でスケジュールを立てるのは最初は難しいがそこで作業予定をしっかり決めることができる。また今日何をすべきかが頭にインプットされるので優秀なビジネスパーソンなら段取りも自然と整理されることだろう。
頭で事前に思い描いたこと、そして実際に紙に書いたことが実現しやすいのは古くから知られている。。その人間の頭脳の特徴をよく捉えたビジネス管理手法といえよう。
実際にやってみた
手法はなんでもよい。エクセルで適当に15分刻みのスケジュールをつくり、埋めていった。
疑問がわくのは15分単位で決められない仕事があるということだ。
・メールやビジネスチャットへの簡単な受領返信
・ちょっとした調べ物など
5分、いや1分で終わってしまう物もある
またWeb制作関係だと、2〜3時間まとまった時間を使うことになる。そこは枠としての時間は存在するが、細かな項目を書くことができない。あまりにも言語化が難しいからだ。そしてそういうことは大きく時間が振れることも多い。
最初はあまり考えず、15分未満のものでも1行使って項目を埋めていった。イメージとしてはToDoリストに時間が紐付くことだ。それも60分といった概算ではなく、10:00 – 11:00といったように一日のスケジュールにToDoの項目が埋め込まれる。
やってみた結果・・・
これは驚きだった。明らかに初日からパフォーマンスが違った。
まず1日の詳細スケジュールをここまで細かく決めたことはない。そのスケジューリングの段階で頭の中に明確な目的意識が芽生えた。
もともとこれまでも毎日の仕事の振り返りや、タスク管理を自分なりに行っていたため、この手法はすんなりと頭が受け入れられたのだろう。その上に仕事効率の明確な向上がみえた。
中には1分で終わるタスクもある。その場合も15分の枠を使って実績を入れるので、予定よりも早く終わっている気分がちょうどよい。何でも計画より遅れると嫌悪感があるものだ。
振り返りもよい経験になった。
振り返るとどの仕事ができていなかったのかが明確になる。次の日に持ち越すものもわかる。長期的な日程と調和させるといろいろ学びがあることだろう。
このようなマイクロマネジメントは好き嫌いがあるが、今の時代には必要になっている。
「働き方改革」という言葉に代表されるように人手不足の現代においては労働時間の短縮化、残業の削減という大波が押し寄せる。社長も含めて社員には1年間で働ける時間が限られているのだ。
15分単位のスケジュール管理に求められること
良いことずくめと思われる15分単位のマイクロマネジメントだが、実際には社内の体制が必要だ。
まず、業務のスケジュールなど立てたことがないビジネスパーソンが殆どだろう。慣れない社員が細かい単位での業務計画を毎日立てるにはかなりの抵抗と能力的ハードルがあるはずだ。
そして毎晩の振り返りも全社員での話し合いの場、サポートが必要だ。綿密に、そして人間性を大切に、本人のプライドを傷つけず正しいフィードバックを行うにはコーチングの技術も必要である。
いずれにせよ何事にも練習が必要である。新しいことを始めるには最初からうまくいくわけではない。会社が限られた社員の時間を最大限に活用できるかどうかは毎日の練習によるのだ。
この手法導入が最も障壁が低いのはコストが掛からないということだ。
コストと言えば毎日のスケジュール表を印刷することくらいだろう。年間の印刷費を考えても数百円にしかならない。必要になるのはあとは社長・社員のやる気だけだ。(これが一番むずかしい)