2018年度版 いまこそ復習したい「中小企業の生産性」とは

「BtoB企業の収益改善ドクター」 中小企業診断士の牧野雄一郎です!

最近は「働き方改革」と言う言葉が人々の耳目を集めていますね。2017年からは霞ヶ関政策の一丁目一番地といってもいい状況です。以前アゴラで「電通新卒社員は時給2269円?時給から見直す働き方」という記事を書き、大きな反響を得ました。

働き方改革。その言葉が及ぼす範囲はいろいろです。例えばテレワーク、短時間勤務といった労働力の確保から、残業規制、IT化、時差ビズ、プレミアムフライデー(死語)、シャイニングマンデー(生まれたての死語)、ホワイトカラーエグゼンプション(高プロ法)まで。

でもその根底に通じるのは全て「生産性の向上」というテーマです。

世界に冠たる日本の「低」生産性

驚くべき事にこれほど真面目な労働者が多い日本において労働生産性は主要国最低水準です。

日本の生産性はOECD加盟国で20位。主要国では最低ライン。

OECD加盟35カ国中20位です。主要国では常に最下位争いをしています。なぜこんなに低いの?? はっきり言って私自身も疑問です。そして集計方法、算出方法に大きな疑念があるのも事実です。しかし世の中はまずここを見ています。特に霞ヶ関は。。

OECD生産性によれば、生産性の高い国は例えばノルウェー。年間の生産性が1200万円となっています。一方で日本は900万円。この数値が表すのは「その国民1人が1年間で稼いだ付加価値の額」なのです。そしてこの生産性が大事な理由は、人々の給料に直結しているから。1年間の付加価値生産高を上回る給料は一時的になら払えますが長期的には払うことができません。

ノルウェーがなぜ高いのか気になって仕方ないですが、まぁそれは置いておいて、、、中小企業が生産性を向上するにはどうすべきか考えて行きましょう!

付加価値÷労働時間 の「付加価値」って?

そもそも生産性とは何でしょうか?一般的には生産効率と同意語に捉えられているかも知れません。「生産性の高い設備」、「この機械は生産性がアップした」。など。

人間の場合でも時間あたりのアウトプットを生産性と表現する場合が多いですね。あの人は生産性が高い。物事を効率よく処理する人などの意味で使われます。これは言い換えれば、限られた時間で多くのアウトプットを出しているという表現として浸透しています。

しかし経営的に生産性とはもう少し明確に決められています。それは「付加価値÷労働時間」です。

ここでいう「付加価値」とはなんでしょうか?よく「付加価値って粗利でしょ?」と聞かれます。でも実はちょっと違うんです。粗利というのは「物品を販売したときに、それに掛かった仕入れ額を引いた金額」です。

話はそれますが会社によっては便宜的に粗利を付加価値と呼ぶこともあります。もう少し厳密に言うと1品目だけ売ったときの粗利は限界利益といい、複数個以上売った時の合計値を粗利と表現します。

で本当の「付加価値」は何かというと、物品の仕入れ価格だけではなく、一般経費、家賃、外部への支払を全て払ったあとに残るのが付加価値です。そして、「人件費は引いていない状態」なのです。

粗利と付加価値の違い

粗利は通常、固定費を引く前です。本来の付加価値は固定費も引いたあとなのです。また粗利は通常、製造原価に人件費を含んでいる場合があります。付加価値の算出では人件費を引く前です。

付加価値以上に人件費は払えない

この付加価値が大変重要なのは、上の図からもわかるように「付加価値以上には従業員に給与を払えないから」です。長期的に人件費は付加価値を超えることはできないのです。付加価値を高めなければ社員の昇給もボーナスを増やすこともできません。給料が低ければに人材を確保することもできないでしょう。商売の仕組みは色々あれど、働く人は皆人間です。ということは労働市場で最も給料が高いところに移る権利があるのです。だから長期的に給料をより高く支払えるところが生き残るのです。

付加価値生産性はどの業界でも比較できる

もう一つ生産性の指標が面白いところは全業種、どんな規模でも比較が可能ということです。中小企業が財務会計のROEやROAなどの指標に溺れるのはあまり良くないと考えられています。そもそも売上や収益が安定しませんので、財務諸表だけをみて何かを判断すべきではないと思います。

しかしこの生産性だけは常に追いかけるべき指標です。なぜならこれは全業種、あらゆる規模で比較ができるからです。労働力をどれあだけ効率よく使えているか。どれだけ効率的に付加価値を生み出せているかは重要な指標ですし、1人あたり、1年あたり、1時間あたりという観点でいくらでも比較が可能です。

例えば自社の昨年VS今年で比較する。同業の上場企業と比較する。そんなことも自由自在にできてしまいます。

次回以降は事例企業にて付加価値生産性をもう少し具体的に計算して身につけていきましょう。

案件の時間管理にはWattaを活用

この生産性を日々の仕事において案件別に管理すると大きな経営のイノベーションが起きます。生産性を記録する上でキーポイントになるのは「案件別の労働時間」。とはいえ案件ごとに毎日時間を記録していくのは大変なことですよね。そんな零細企業の案件生産性管理のために開発されたのが私たちのWatta(ワッタ)です。Wattaは案件ごとの売上・経費を登録しておくとそれに紐付けて時間を自動的に集計することができます。

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