輝ける一つの事業に注力せよ

それからジョブズは、製品ラインを削減すると決めた理由を説明。それは全て、次の奥深い質問から始まっていた。「アップルとはいったい何者で、この世界のどこに居場所があるのか」

1996年スティーブジョブズがアップルの経営者に復活した後もアップルの危機は続いていました。ジョブズは多すぎたアップルの製品ラインアップを70%も削減することとし、上記のような話を従業員に熱く語ったそうです。

製品を絞り込むことで復活したアップル

いまや時価総額100兆円を超える企業(2018年8月時点)になったアップルですが、経営危機で瀕死の状態がありました。私が彼の偉業を一つあげるとすれば、それは製品ラインアップを絞り込んだことといいます。

どんな企業にとっても製品ラインアップを絞るのは勇気の要ることです。失ってしまう商品の売上・利益はもとより、顧客からの信頼を得られなくなるのでは無いか。そんなことが起きれば残された事業も衰退の道を歩む可能性があります。

しかし実際にアップルに起きたことは真逆でした。製品を絞り込んだ結果、単価、販売数量ともに上がり、利益はもとより顧客からの信頼も大幅に上がったのです。

今でもアップルは両手で数えるほどの製品ラインナップしかありません。その少ない製品に多くの力を注力することにしたのです。アップルの2017年度売上は約30兆円ですが、2018年時点での主な製品は以下のとおり数少ないのです。

製品群 主な製品
iPhone iPhoneX / iPhone8 / iPhone8 plus
iPad iPad Pro 12″ / iPad Pro 10″ / iPad
Mac Macbook Pro / Macbook / MacbookAir / iMac / iMacPro
その他 AppleWatch/ Apple TV

厳密には細かなモデル違いはありますが、製造上の対応の範疇です。1製品の売上は少なくとも1兆円以上ということになるでしょう。これはアップルに限った話ではありません。実際に多くの企業にとって製品(事業)を絞ることは成長のための一丁目一番地なのです。

事業の絞り込みは生産性をアップする

これは生産性とも大きく関連します。前回のブログでもご紹介したように、企業がオペレーションする段階で、付加価値は既に決まっていると書きました。つまり受注したり製品を生産する段階では利益率などは決まってしまうのです。つまり商品力、マーケティング、事業の体制などによって大方の勝負は決まります。

大半の企業では複数の事業を並行してもっており、どの事業が主体なのか選べていません。各事業でそこそこの売上があるからこそ手放せないのです。

日本の大企業にもこれは言えます。パナソニックは家電メーカーと多くの人が答えるかも知れません。しかし実際には住宅から工業部品、医療まで幅広く取り組んでいます。子会社には金融会社もあります。

多くの事業を持つことは安定感に繋がりますが極所戦で負けてしまいます専業企業には勝てないからです。結局経営資源の半分が中途半端になり、品質も上がらずコストも下がりません

事業を絞り込むことで売価は上がり、コストは下がる

一方で事業を絞り込めばどうでしょう。ブランディングやマーケティングに多くの予算を掛けられ、社員の熟練度が上がり、資材購入量は増えてコストも下がります。結果的に魅力的な商品として売価は上がり、作るためのコストは下がるのです

付加価値の大半が頭脳労働・知的労働によって生み出される時代です。事業を絞り込むことで高い能力を一つの分野に注力できれば多くの変革を行える可能性があります。

ではそもそも、事業の絞り込みを行うとすれば、その根源になるものは何でしょうか?ジョブズの言葉にある「アップルとはいったい何者で、この世界のどこに居場所があるのか」にヒントがあります。

「我が社はいったい何者で、この世界のどこに居場所があるのか」

このことを真剣に考えている企業はどれほどあるでしょうか。●●加工の技術では一流だ。この圏内の●●分野ではシェア1位だ。それはある面で客観的な事実に基づいた分析です。しかし一方で、自分たちがフリーハンドで思い通りに事業の構想を描けるとしたら、どのような企業になりたいでしょうか。唯一輝ける場所があるとしたらそこはどんな市場・顧客でしょうか。そんなことを年に数回でも考えることが必要です。

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