サイゼリヤが高収益のヒミツ

生産性を高めるというと労働時間を短くすると考えがちですが、我々は作業量を減らすことを徹底します。

正垣泰彦(サイゼリヤ創業者)

みなさんサイゼリヤで食事したことはありますか。いまや全国に約1000店舗を展開するイタリア料理のフランチャイズチェーンです。低価格のメニューを武器に庶民の味方として親しまれていますね。

実はいまから20年以上前、私は大学生の頃サイゼリヤで2年間アルバイトをしていました。まだ上場前でしたが、全国に約100店舗あり、当時から大変な人気。全国でも3番目に売上の大きな店舗でしたので土日は大変な忙しさです。それでも当時10社くらいのアルバイトをした経験の中で最も面白い職場でもありました。

日々変化の少ないと思われる飲食店のアルバイトがなぜここまで面白かったのか。それはみんなで収益を上げるということに燃えていたからです。社員、アルバイト全員が日々の収益を上げることに意識が高く、それがよい活気となり仕事の楽しさになっていたのでしょう。

外食業界では圧倒的な利益率

サイゼリヤは低価格メニューですので薄利多売に思われているかも知れませんが、実際は高収益企業です。2017年の経常利益率は8%となっており、多くの外食チェーンより高利益率を維持しています。

なぜ高収益を続けられるかといえばそれは生産性に対するこだわりからです。私がアルバイトしていた20年前でも全ての動作をどうすれば効率よくなるかについて常に改善が施されていました。
調理場のみならず、アルバイトの動きまでも作業の効率化が常に細かく指導されていました。

冒頭の引用文にあるように、正垣社長の考え方は常に合理的です。あくまでも人の労力を減らす、ミスを減らす、難しいことを簡単にする、無駄な費用は掛けない。そのような考え方が全ての経営シーンに徹底しています。

正垣社長は東京理科大学の出身です。理系の合理的考え方はドライな経費削減という形では無く、労働者をラクにするためにどう効率化するかに向かっているようです。

「牧野、休憩入れ」

サイゼリヤでは生産性の考え方は日々のオペレーションでも徹底されています。生産性は「売上 x 0.8」 を粗利として、全従業員の労働時間で割ります。これをなんと1時間ごとに出しているのです。

当時の店舗は朝10時〜夜中の3時まで営業していたため計15時間開店しています。この15回の1時間ごとに上記生産性を計算しているのです。いまはIT化されているかもしれませんが、当時はA4の紙に全ての売上、時間、客数、人件費を記入して計算するのです。

社員が手計算することで経営の数値に強くなります。徹底的に生産性、客単価、収支を計算させることで経営の感覚を磨いているのです。

当時、象徴的なことがありました。昼過ぎにアルバイトに入っていたのですが予想以上にお客様が入らない。そうすると生産性が下がるわけです。ここで社員がアルバイトの私に「牧野、休憩入れ」と言われました。

通常はサボって楽な昼勤務となるわけですが、アルバイトを休憩に入れて少しでも人件費を減らして生産性をアップしようとする取り組みが徹底されています。このような事が現場で徹底されている企業って凄く強いと思いませんか?

全ての企業に通じるサイゼリヤの経営管理

サイゼリヤの徹底した合理的な考え方は私自身の社会人や企業文化の考え方に大きな影響を与えました。このあと大学4年生の頃から経営の本を読みあさり経営の世界の面白さへと没頭していったのです。

この経験から得られた考え方は今も活かされています。多くの企業コンサルティングを行う中で必ず見るのが生産性です。規模の大小にかかわらず比較できる「生産性」という考え方は普遍的だからです。

Wattaを作った背景にもサイゼリヤの経験が生きています。全ての企業が生産性を高めることができればもっと働きやすい社会、もっと稼げる日本企業が増えるからです。

みなさんもサイゼリヤに行ったらスタッフの動き、店舗の配置、テーブルの特徴などを他の飲食店と比べて観察してみて下さい。さまざまな面白い発見がありますよ。

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